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大学に進学する意味って? 採用コンサルタント・谷出正直さんインタビュー

2017年2月23日

大学に進学する意味って? 採用コンサルタント・谷出正直さんインタビュー

小学校、中学校の義務教育を受け、高校で大学受験に向けて受験勉強し、大学に進学する――。日本人のある階層の人にとっては「当たり前」「普通」の流れかもしれない。平成28年度の文部科学省のデータよると、日本人の大学進学率(過年度卒含む)は52.0%だ。

現在の中高生にとって、大学に進学する意味は何だろうか。採用コンサルタントの谷出正直さんに話を聞いた。

<取材先>
谷出正直
●谷出正直(たにで・まさなお)
1979年生まれ、奈良県出身。教師を目指し教員免許を取得したが、エン・ジャパン株式会社に営業職として入社。同社および同社子会社で、新卒採用支援事業に約11年間携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用コンサルティング、採用アナリストとして活動。勉強会の主催や各種講演を通じて、就職活動に関する情報を発信している。

▼「21世紀の就職はどうあるべきか」を考えたい(TSUKUBA WAY)
http://tsukubaway.com/column/professional/1593

<聞き手>
芹沢孝広
●芹沢孝広(せりざわ・たかひろ)
クリスクぷらす編集長。1972年生まれ。大学卒業後2年間、バンド活動をしながらフリーター生活を送る。その後IT業界で、大手企業からベンチャーまで数社を経て、株式会社クリスクのCTOに就任した。エンジニアとしてシステム開発をしながら、広報業務も兼務。各界の著名人をゲストに招いた自社セミナーを主催し、多様な生き方に触れる。2児の父。

 

芹沢芹沢:谷出さんはもともと学校の先生を目指していたのに、一般企業の営業職に就くって、すごくおもしろいキャリアですね。
 
 

谷出谷出:教師になったとして、学校で接する生徒の大多数は社会に出て働くわけですよね。社会人経験のない自分が、生徒たちにどう進路指導するのかと考えたら……そりゃ無理やろ!って(笑)。そこで、まず一般企業に就職して、社会人を経験してみようと思ったんです。
 
 

芹沢僕は常々、教師は一般企業である程度働いてから学校に入るようにしたらいいのにと思っているんですよね。例えば、教員免許を取得しても、最低2年間、一般企業での就職経験がないと教職に就けない決まりを作るとか。

このメディアは、通信制高校の資料請求サイトをやっている弊社のオウンドメディアという立ち位置なんです。通信制高校って、登校頻度が低かったり制服を着なくていい学校が多い。コミュニケーション能力に不安がある子や男女別の制服を着たくない子にとってはいい面もあるのに、中学校の先生が通信制高校への進学を選択肢として生徒たちにほとんど紹介していないんじゃないかと思うんです。
 
 

谷出教師になる人って、小学校、中学校、高校、大学とストレートに道を歩んできた人たちが圧倒的に多いですからね。世の中には回り道、寄り道を活かした働き方をしている人たちがたくさんいるのに、教員や教育委員会の中にはほとんどいない。だから、道を外れることを好まないというか、浪人をさせるよりも受かるところに入れるとか、そういう考えになりがちなのではないでしょうか。

 

大卒かどうかは、就職にどれくらい影響するの?

芹沢今回聞きたいのが、学歴ってどれくらい人生に影響するのかなってことなんですけど。

僕自身、一応、奨学金をもらって大学に行きました。なぜか法学部を卒業して、37歳まで奨学金を返済し続けて。それで、44歳の今はWeb関係の会社の役員をしていたり、応援している企業の技術担当をしたり、自分で会社を立ち上げたりしているんですね。

学歴があんまり今のキャリアに関係ないというか、あの大学4年間ってなんだったんだろう、意味あったのかなと思うときもあります。貧困の連鎖を断ち切るためには、行きたい人が大学に入れる社会になったほうがいいとかそういう話はわかるんですが、行ける環境の人が主体性なく、なんとなく大学に行っておくかという風潮はどうなんだろうと感じることもあるんですね。

大学に行く意味って、将来の就職のためと考える人が多そうですが、谷出さんはどう考えていますか?
 
 

谷出まず、大卒の新卒採用と、高卒の新卒採用って、そもそもルールが全然違うんですよ。学歴不問企業かどうかの前に、大学を卒業して働く人と高校を卒業して働く人は、採用業界の中では同じポジションではないんです。
 
 

芹沢えっ? そうなんですか?
 
 

谷出大学生の就活にも、就活解禁日などのルールが決められていますよね。高校生の就活にもルールがあって、「学業優先」の考え方で大学生の就活より厳しいルールが決められているんです。細かいルールは都道府県によっても違うんですが、たとえば、大学生は志望する会社すべてに応募書類を提出できるのに、高校生はある時期まで1社しか応募できないとか、高校生の応募書類受付は9月からとか……。そういうルールがあることによって、企業にとっての高校新卒と大学新卒は、まったく別物として分類されています。
 
 

芹沢さまざまな事象が多様化されている現代にあまり合っていないルールのような……。高卒で就職したいと思ったら、卒業後の4月以降に動かなきゃいけないなんて場合もありそう。自由に就職活動できないのなら、なんとなくでも大学行っといたほうがいいのかなという気もします。

003
学歴による賃金格差(平成27年)
 

新卒一括採用のメリットって?

芹沢日本の新卒一括採用って、一部で悪く言われたりもしていますけど、状況は変わってきているんですか?
 
 

谷出うーん、確かに悪く言われていますが、新卒一括採用には企業が新人を育てやすいという大きなメリットがあるんです。それまで学生で、社会のことを知らない新人たちを一斉に採用すると、研修するタイミングが一緒で育成コストが抑えられる。同期の存在ができて、切磋琢磨しやすい、励ましあいやすい。同期の存在は、新人にとってもありがたいですよね。

もしも新卒一括採用をやめると、解禁時期などがないので、通年で企業が採用活動をすることになります。すると、ずーっと探さなきゃいけないから、求職者側も大変なんですよ。「あの会社受けたいけど、今は募集していないなぁ」って、ずっとウォッチしていなきゃいけない。で、どこかのタイミングで諦める、と。
 
 

芹沢たしかにそれは大変かも。
 
 

谷出自由になればなるほど、自己責任の世界になってきますからね。競争も激しくなるし。そして、近年は「第二新卒」といって、25歳までを新卒と同じように対応する企業も出てきました。そうすると今度は、企業が人の育成に力を入れなくなるんです。

会社に入社して1~2年働いても、「やーめた」と短期間で辞められると、育てた企業としては元を取れていないですよね。一方、その人材を「若手社会人(ほぼ新卒)」として採用する会社は得をします。つまり、自分たちがコストをかけて人材を育てる必要性がなくなり、以前のように成長を見込んだ人材を採用しなくなるんです。

そうすると、採用判定の基準がますます厳しくなって、新卒の就職率が下がります。こんな状況なので、いま仮に日本企業が新卒一括採用をやめてしまったら、どこにも就職できない新卒フリーターやニートが大量発生してしまいます。
 
 

芹沢卒業してすぐ正社員として就職しなくても、いろいろ道を探しながら職を探せる国もあると聞きますけど、その自由さは厳しさの裏返しなんですね。
 
 

国によって違う、進学・就職の仕組み

谷出日本と比べて海外がよく見える点もあるかもしれませんが、例えばヨーロッパの中で豊かな国と言われるドイツでは、大学入学時にすでに割り振られていますからね、人生のコースが。
 
 

芹沢そういう話は少し聞いたことがあります。詳しく教えてください。
 
 

谷出そもそもドイツでは、高校の成績で「あなたはここの大学を受けられるけど、ここの大学は受けられない」って決められるんですよ。で、その大学を出たらどういう職業に就くかというのはある程度方向性が決まっているから、高校生のときの成績で、すでに大学卒業後の人生が決まるとも言えます。「私ここの大学行きたいです」と言っても、「いやいや、あなたの成績では、そもそもここの大学は受けられないよ」って。
 
 

芹沢「高校の成績がどうだろうが、大学入学試験で一発巻き返し!」というのは成立しづらいんですね。
 
 

谷出また、アメリカを例にすると、大学に在学中や卒業後にインターンシップをするのが当たり前になっています。そのインターンって、日本のブラック企業なんか比じゃないくらい安月給なんですよ。それで何年か頑張って、やっと正社員になれる。アメリカでは、「大学卒業したらすぐに正社員にならなくてもいい雰囲気」なのではなく、「経験のない新卒は正社員になれない」んです。

就活のときも、大学のランクによって受けさせてもらえない企業もあります。普通の大学生が有名企業に行きたいと思っても、受けるすべがないんですよ。相手にされません。

日本でも、大学に行って学歴を得て貧困の連鎖を断ち切ろうって言いますけど、それは学歴社会がベースの考えなんですね。アメリカは日本の比じゃないスーパー学歴社会なので、とにかく貧困から抜け出したかったら、幼年期から勉強して成績を上げるしかない。そうしないと、大学を受けられないし、希望した職業への就職もできません。
 
 

芹沢日本は、どんな成績でも高校の卒業資格さえあれば好きな大学を受験できるし、好きな企業にエントリーシートを送ることができますもんね。
 
 

結局、大学って行った方がいいの?

谷出学歴不問企業が増えているとはいえ、応募条件に『大卒』を掲げる企業がまだまだ多いのが現状です。大卒の新卒採用を行っている会社は、2万5000社以上あります。昔ながらの大企業に就職したい人、有名企業で出世を考えている人は有名大学に進学しておくべきでしょう。就職試験の時だけでなく、入社して出世を考える際にも学歴は関わってきます。
 
 

芹沢いわゆる「学閥」と呼ばれるものもありますよね。同じ大学の卒業者同士で、会社内で派閥がある企業も存在するとか。
 
 

谷出学閥のある職業として有名なのは、医師や金融業界ですね。また、歴史のある会社の場合も、有名大学出身者が力を持つポストにつくと、自分と同じ大学を卒業した人を優遇しがちです。
 
 

芹沢やっぱり、就職という点からは「経済的に行けるのであれば、とりあえず大学に行こう」と考えるのが正解なんですかね。
 
 

谷出歴史のある会社で昇りつめたいんだったら東大に入っておいた方がいいとか、そういうのはありますね。
 
 

これから生き残る企業って?

芹沢谷出さん自身は、今後、日本の企業内の制度や採用、働き方がどんなふうになったらいいと考えていますか?
 
 

谷出働く本人が納得しているなら、どんな道でもいいと思います。昔ながらの体質の日本企業で、出世争いをするのもよし。上のポジションを求めて、ステップアップのために転職を繰り返すのもよし。会社内で役職を上に高めるのではなく、ひとつのスキルを高めてフリーランスとして生きていくのもよし。そういうふうに、もっと生き方を選びやすい世の中になればいいのにな、と思います。
 
 

芹沢学生のうちになんとなくの方向性だけでも決めたほうがいいのかもしれないですね。自分は日本の大企業で出世争いをして上に昇っていきたいのか? それならなるべくいい大学に行って、新卒一括採用で大きな企業に入らないといけないでしょうし。そうじゃない人生を歩みたいなら、自分に学歴じゃない価値をつけないといけない。
 
 

谷出あと、これからどんな企業が生き残っていくかを考えないといけないと思います。僕は、変化に対応できる企業しか生き残れないと思っていますよ。大企業が急に調子が悪くなって、ニュースで見てびっくりすることがありますよね。これからもそういうことがどんどん起こる。
 
 

芹沢変化というのは、働き方の多様化とか、そういうことでしょうか。
 
 

谷出そうです。そういう変化に対応していける企業が生き残る。今後、優秀な人が果たしてどちらを目指すか。変化に対応している企業か、旧い体質のままの企業か……。家族が寝ているときにしか帰れない企業なのか、家族との時間や自分の時間を取れる働き方の会社なのか。
 
 

芹沢大手企業も、働き方の多様化に対応している企業がありますもんね。同じ知名度で、働きやすい制度があれば、そちらに優秀な人が集まりますよね。
 
 

おもしろい人材ってどんな人?

谷出僕は採用コンサルタントとして企業の採用支援をしているのですが、その中で最近増えてきているのは、「谷出さんの周りにおもしろい人いないの?」という相談ですね。本当に多様化の波が来ているんだなと感じます。
 
 

芹沢おもしろい人って、具体的にはどんな人ですか?
 
 

谷出例えば学生とか第二新卒だったら、「4年間◯◯に夢中になっていたので、就活しませんでした!」みたいな人。何か夢中になるものがあって、とにかくそれに打ち込んでいた人ですね。なんとなく就活しなかっただけの人はおもしろくないんですけど、主体的に何かに一生懸命になっていた人はおもしろいんですよ。

あとは、長期間のインターンシップをしている学生とか。僕の知っている子では、大学2年生のときに「大学に行く意味がわからなくなった」と言って、休学して長期のインターンをしている子がいます。

大学生って、それだけでアドバンテージがあるんです。大学在学中に何かをやるのは、社会人が同じことをやるよりもインパクトがある。人より早くやるって、大事です。だから、もしせっかく大学に行ったなら、「大学生」という身分を利用して、いろんなことに挑戦してほしいなと思います。
 
 

芹沢挑戦したり、のめりこんで一生懸命やったりって、それも一つの才能ですよね。
 
 

谷出対象は何でもいいんです。受験勉強でも、バンドでも、遠くに出かけることでも、近所のバイトでも、企業でのインターンでも、研究でも、スポーツでも。とにかく、たまたま出会って、ピンと来たものを本気でやってみる。まずはやってみなきゃわからないし、懸命にやらなきゃ物事の本質なんかわかりませんよ。
 
 

大切なのは「どんな大人になりたいか?」

芹沢進路って、そもそもどんなふうに決めるものなんですかね。
 
 

谷出大学に行くか行かないかも含め、進路に迷ったら『自分はどんな大人になりたいか』を考えるのがおすすめです。有名企業に入ることがゴールじゃない。「そこに入って、何がしたいの?」と。それが明確じゃなきゃ、そもそもその企業には採用されませんから。

有名企業に入って出世街道を進みたいのか? 家族との時間を大切にしたいのか? 一つの領域で卓越した存在になりたいのか? 身近な人の役に立ちたいのか? ……? もちろん、まだまだ自分がどんな大人になりたいのか、イメージできない中高生はたくさんいるでしょう。そしたら、いろいろなことを知るために大学に行くのもいいと思います。

人は、わからないことや知らないことから選択することはできません。将来なりたい職業から逆算して進路や学校を決めようと思っても、そもそも、世の中にあるいろんな職業を知らないと選べないですよね。
 
 

芹沢進路を決める際に、親や教師など、まわりの意見が気になる子って多いと思うんですよ。そのへんはどう思いますか?
 
 

谷出僕、いつも若い子に言うんですよ。ちょっと失礼な話になりますが、あなたの親や学校の先生は、あなたより先に死ぬよって。寿命という意味ですよ。

これから日本人の寿命はどんどん延びます。これまでは寿命が短かったから、学生から社会人になって、ずっと同じ会社に勤めて定年退職する、というのが日本人の代表的な生き方でした。しかも、日本では終身雇用が当たり前だったから、いい大学に行って、新卒のときに有名企業に入れれば、それで一生安泰だったんです。でも、これからどんどん寿命が延びて、これまで定年退職が55歳だったのが、60歳になり、65歳になり、今後もっと引き上がるのではないかと言われています。つまり、社会人時代が、これまでよりずっと長くなるんです。大卒で入社すると約50年、社会で働くことになる。果たして、50年という社会人人生を、たった一社だけで過ごせるのか、と。

いま学生生活を送っている人は今後、親世代とはまったく違った社会人人生を生きていかなければならないでしょう。そのとき、親が『自分の時代はこうだった』という意見は参考になるでしょうか? 人生において選択肢が与えられたとき、あなた自身の頭で真剣に考えて、進路を決めてほしい。そして、その決めた選択肢を、あとで良かったと思えるような行動をしてほしいと思います。
 
 

芹沢最後に、大学に行くか行かないかを迷っている人に、アドバイスをお願いします。
 
 

谷出どんな道を選んでも、自分が選んだ道を正解にしてやると思い、行動をしましょう。もし大学に行ったら、4年という歳月と多額の授業料を“投資”していることを意識しましょう。そして、研究でもサークルでもバイトでも遊びでも旅でも、なんでもいいので、目の前のことを真剣に楽しんでください。大学に行かないなら、自分のやりたいことを徹底的に取り組んでください。

(田島里奈/ノオト)

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