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身近な人がうつ病に……どう言葉をかける? うつ病当事者・東藤泰宏さんが実践する接し方

2017年3月2日

身近な人がうつ病に……どう言葉をかける? うつ病当事者・東藤泰宏さんが実践する接し方

世界でうつ病に苦しむ人は推計3億2200万人(WHOの発表より)。日本ではおよそ506万人がうつ病だと推計されている。 

もし周囲の人や家族でうつ病に悩んでいる人がいたら、どんな風に接したらいい?

うつ病当事者で、U2plus創業者の東藤泰宏さんに話を聞いた。

<取材先>
東藤泰宏
●東藤泰宏さん
認知行動療法をベースにしたうつ病患者向けコミュニティサイト「U2plus」の創業者。現在は株式会社CAMPFIREで、“社会にいいこと”に特化したクラウドファンディングサービス「GoodMorning」を担当。

▼U2plus(ユーツープラス)
https://u2plus.jp/
▼GoodMorning
https://camp-fire.jp/goodmorning

<聞き手>
芹沢孝広
●芹沢孝広(せりざわ・たかひろ)
クリスクぷらす編集長。1972年生まれ。大学卒業後2年間、バンド活動をしながらフリーター生活を送る。その後IT業界で、大手企業からベンチャーまで数社を経て、株式会社クリスクのCTOに就任した。エンジニアとしてシステム開発をしながら、広報業務も兼務。各界の著名人をゲストに招いた自社セミナーを主催し、多様な生き方に触れる。2児の父。

 
芹沢芹沢:東藤さんは、うつ病の当事者として、うつ病患者のためのWebサービスを作ったんですよね。
 
 

東堂東藤:はい、「U2plus(ユーツープラス)」というサービスで、認知行動療法をベースにしたインターネット上のコミュニティです。うつ病になると、「できなかったこと」に目を向けてしまうことが多いのですが、その日できたこと、楽しめたことを毎日記録したり、ユーザー同士で励まし合うことができます。今は僕達の手を離れて、運営は違う企業が担当しています。
 
 

うつ病になったら「生きる力」が弱くなった

芹沢東藤さんがうつ病を発症したと自覚したのには、どのような出来事があったのでしょうか。
 
 
 

東堂僕がうつ病を発症したのは、働きすぎたからです。朝6時に起きて、電車で2時間かけて通勤して、お昼ご飯を食べるのは17時頃。そして、23時すぎまで仕事をして、また2時間かけて家に帰る……。それを、土日も休まず、長期休暇もなく、年末年始も続けていました。そしたら、ある日急にキーボードが叩けなくなってしまって。PCの前に座っても、手が動かないんです。それで会社を辞めて、1年半くらい実家で療養生活をしていました。
 
 

芹沢大変でしたね……。
 
 
 

東堂自分がうつ病になって感じたのは、「生きる力が弱くなる」ということ。すぐに疲れてしまって、いろんなことができなくなりました。例えば、仕事帰りに電車に乗って家へ帰るとき、駅からたった7分の自分のマンションまで歩けなくて……。思考も常にネガティブで、「なぜ何もうまくできないんだろう」「自分はダメ人間だ」と考え続け、過去にあったつらい出来事を何度も思い出していました。そして、まったく眠れなかったり、逆に眠り続けてしまったり。
 
 

芹沢会社を辞めて、家で休養を取る中で、外に出るきっかけになったのは何だったんでしょう?
 
 

東堂働いている時は会社中心の生活で、人間関係もそこでしか築けていなかったので、仕事を辞めたことで人とのつながりが全部切れてしまいました。外との関わりがないのはまずいな、何かした方がいいなと思ったのがきっかけです。

とりあえず生活費を稼ごうと思って、IT系の会社に入りました。そこにいさせてもらった期間は1年くらいで、結果的に起業準備期間になりましたね。そのあと「U2plus」でビジネスコンテストに出て、優勝賞金を資金に起業しました。
 
 

一度人生を諦めたら、逆にうまくいった

芹沢僕自身はうつ病になったことがなくて、当事者の方の状態や気持ちが想像しきれてない質問かもしれないんですけど。うつ病のときに、就職したりサービスをつくったり、ビジネスコンテストに出場したり、起業したりするって、難しくありませんでしたか? うつ病じゃない人にとっても、かなりパワーの必要な行動だと思うのですが。
 
 

東堂今だから言えますけど、逆に、うつ病だったから成し遂げられたことかもしれません。「もう自分の身に何が起きてもいい、今回の人生は諦めよう」と思っていましたから。結果的に、難しい社会課題解決の旗を掲げたことで、多様な方々の協力や、ユーザーからの支持を受けることができました。
 
 

芹沢東藤さんは、うつ病であることを周囲の人に話していますよね。どのように伝えましたか?
 
 

東堂僕は、初めは高校の同級生だった友達1人に、うつのことをカミングアウトしました。泣きながら話しましたね。家族に初めて言った時も、泣きながら話して……。

みんなが理解してくれるとは限らないですし、仕事関係の人には必ずしも言わなくてもいいとは思います。でも、もし家族とか友達に少し言えたら、心がラクになる可能性もあります。
 
 

芹沢精神的に不調だと、うつのことを話す以前に、人に会うのも難しくなりそうですよね。
 
 
 

東堂最初は大人数の飲み会に行くのが怖くて難しかったんですけど、少人数の集まりから慣らしていきました。まずは3~4人の飲み会に行って、「実は病気になって、うつ病なんだ」と。そしたら、意外にみんな「そうなんだ」と普通の反応だったので、ほかの場所でも言えるようになりました。だんだん、うつ病当事者のためのサービスを考えたり、自分の症状をネタにして、泣かないで話したりすることもできてきて……。根は明るいんですよ。

僕がそうだったように、会社や学校だけで人間関係を築いていると、そこが合わなかったときに生活自体が難しくなってしまう。幅広くなくて細いネットワークでもいいから、家族や友達、近所の美容師さんとか、自分の感情を共有できる場所を複数持っておくといいと思います。
 
 

芹沢うつ病の人に限らず、いろんな方向に知り合いをつくっておくのは大事ですよね。会社で嫌なことがあったとき、会社だけの人間関係しかないとダメージが大きい。でも、ほかのコミュニティにも属していれば、会社なんてその中の一つなんだからと思えてダメージが小さくなる気がします。
 
 

東堂でも、僕は今こういう風に話してますけど、いろんなコミュニティに属するのも結構しんどいですよね。誰でもいろんなところと器用に付き合えるわけじゃないから、あんまり無理しすぎなくていいのかなと思います。テンションの高い集まりは、自分にパワーがないとつらいので、元気がないときはイベントとかに行くのはやめておいた方がいいです。
 
 

芹沢学校や会社など、メインで属しているコミュニティ以外にも何か探したいなと思ったら、まずはどうしたらいいでしょうか。
 
 

東堂うつ病の人であれば、行きやすいのは当事者会かなと思います。U2plusでも、地域別に開催しています。そういう会に少し顔を出して、同じくらいのテンションの人と交流して、もしも気が合ったら連絡先を交換してもいいし、しゃべらないで帰ってきたっていいですし。

あとは、習い事もおすすめです。一対一で会話する必要がないし、話すときも共通の話題がありますしね。
 
 

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自分がうつかもしれないと、自覚する瞬間はあるの?

芹沢うつ病って、本人はどうやって気付くのでしょうか。
 
 
 

東堂悪い状態をズルズル引きずって、だんだん悪化していって、あれ、これなんだろなんだろう、ああうつなんだって、やっと気付く……そんなパターンが多いんじゃないかと思います。自分がうつだと自覚するのって、すごく難しいんですよ。セルフイメージが壊れてしまうことなので。
 
 

芹沢どんな病気もそうかもしれませんが、悪化してからじゃないと気付きにくいんですね。
 
 
 

東堂「自分だけはうつにならない」と考えているのも気付きにくい原因かもしれません。U2plusでユーザー約500人にアンケートを取ったんですけど、ほとんどの人が「自分がうつになるとは思っていなかった」と回答していました。
 
 

芹沢自分がうつ病だということを自覚したくないし、ほかの人に知られたくない気持ちもあるのかもしれないですね。特に地方だと、どこの病院に行っていたとか広まりやすいですし。
 
 

東堂そうですね。周りが気付いていても、本人が「自分は絶対違う!」と言い張る場合もあります。うつ病だけど病院に行っていない人は、受診している人の3~4倍くらいいるんじゃないかという話もありますし。
 
 

芹沢周囲に調子が悪そうな人がいると、思わず「元気出そうよ」みたいに、声をかけてしまうこともありますが、そういうのは本人にとっては負担になるのでしょうか?
 
 

東堂「まだできる」「大丈夫」「頑張れ」と言われることで、どんどん悪い状態にハマっていってしまうことはあると思います。なので、やる気がでない状態とか、落ち込んでいる時は、本当はその状態を受け入れて休んだり、「調子悪いんだな」って自覚したりした方がいいと思いますね……。
 
 

芹沢励ましの声をかけることが必ずしも悪いわけじゃないけど、まわりの「元気出して」に惑わされず、自分の調子の悪さを自覚することも大切だということですね。
 
 

メンタル不調に陥っている人にはどう声をかけたら?

芹沢では、客観的に見て、最近様子がおかしいな、という人がまわりにいたら、どんな風に言葉をかけたらいいんでしょう。例えば、SNSで「元気が出ない」「つらい」「死にたい」「今から自殺する」といった内容を書いてる人も目にします。
 
 

東堂「SNSで死にたいとか言うやつは結局死なない」と言う人もいるんですけど、本当に死ぬんですよ。そこは周囲も意識する必要があります。
 
 

芹沢僕も身近な人を自殺で亡くしているのでよくわかります。でも、例えばSNSでそういう投稿を見た時、どこまで関わればいいんだろうって考えるんですよね。家族でもないのにとか、責任取れないから、関わるのは一切やめようとか考えちゃって。
 
 

東堂あくまで僕の場合ですが、そういう投稿を目にしたら、一回だけコミットすることはあります。それを全員に毎回はできないので、1回だけとか、たまたま投稿を目にしたら、など自分で線を決めるんです。電話やメッセで話を聞いていても、夜の◯時になったら打ち切って寝るとか、ルールを決めます。
 
 

芹沢もし自分の家族がうつ病になったら、どこまで関わりますか?
 
 
 

東堂まず自覚してほしいのは、一番大事なのは自分だということ。共倒れになって、結果的にその人を長期的に支援出来なくなるのは良くない状態です。ずっと付き合って同じ精神状態でいると、支える側の家族も疲れちゃいますよね。その場合もルールを決めて、例えば、1日1時間はグチや話を聞く、1時間経ったら電話を切る、違う場所に住んでいたら自宅に帰る。こういう対応に正解はないんですけど、僕だったらそうします。
 
 

心の不調を和らげるには、いろんな人に広く浅く相談してみるのも一つの手

芹沢最後に、今うつや精神的な不調で苦しんでいる人、やる気や元気が出ない人に、メッセージをお願いします。
 
 

東堂僕が生き延びれたのは、「死ぬほど困っている」ということを、知り合いに片っ端から連絡して、 なんとか助けてもらったからです。もちろん全員が対応してくれたわけじゃなく、連絡したものすごい人数の中の数人が、話を聞いてくれたり、入院治療のできる病院を紹介してくれたりしました。

僕がおすすめしたいのは、「いろんな人に、広く浅く相談してみること」です。心から信頼できて、いつでもどんなことでも相談できる人がいればいいですけど、そんな人、なかなかいないですよね。いたとしても、調子の悪いあなたの話をずっと聞いていたら、今度はその人が疲れてしまうかもしれません。

だから、「もしかしたら誰かが助けてくれるかも」くらいの気軽な気持ちで、一人の人に頼り切らず、いろんな人に素直な気持ちを話してみてください。もちろん、あまり関わりのない人に正直な話をするのは、僕だって恥ずかしいです。でも、僕の場合は、恥ずかしさを超えてたくさんの人に向けてSOSを発した時に、物事がうまくいくことが多かったです。

一番体調が悪化していた時期は「死ぬことは絶対に正しくて、ほかに道はない」と思っていたのですが、なんとか今日も生きて、今は「生きるのもそんなに悪くないな」と思っています。

実際に死ぬのは、今日じゃなくて、明日でもいいはず。もし今死にたかったら、「死ぬけど、今日じゃなくて明日」と思って、なんとか1日生き延びてみてください。そしたら、あなたの生きにくさが少し減る日が来るかもしれません。

(田島里奈/ノオト)

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