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子どもたちが自分らしく学べる場所を日本中に広げたい――エデュコレ大阪に見た、これからの教育のカタチ

2017年11月22日

子どもたちが自分らしく学べる場所を日本中に広げたい――エデュコレ大阪に見た、これからの教育のカタチ

子どもたちが自分らしく学べる場所を日本中に広げたい――エデュコレ大阪に見た、これからの教育のカタチ

11月12日(日)、立命館大学大阪いばらきキャンパスにて「エデュコレ2017~多様な教育の博覧会~」が開催された。

2009年にスタートしてから5回目となる今年は、大阪と東京の2会場での開催。教育関係者や子どもと関わりを持つ大人が、公教育やフリースクール、オルタナティブ教育など、国内にある多種多様な教育に出会うことを目的に開催されている。出展団体を公募し、大阪会場では39団体が集まった。

主催は一般社団法人コアプラス。今回は、東京会場に先駆けて開催された大阪会場でのイベントをレポートする。
 

学校、お寺、島、山村、船上……学びの場所はひとつじゃない

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いくつかブースを紹介しよう。途切れることなく参加者が訪れていたのが、認定NPO法人 D☓P(ディーピー)のブースだ。

D☓Pは、通信・定時制高校を対象に、つらい経験を持つ大人との対話を軸にした授業を提供している。不登校経験や経済的困難、発達障害など、さまざまな「しんどさ」を抱える生徒たちに、独自のプログラムを通して「人とのつながり」や「成功体験」を持ってもらえるようサポートしているのだ。

「提供するプログラムには3つの目的があります」と話すのは、D☓Pでインターン生として活動する岩本崇志さん。「自分の好きなこと、長所を知る」「人を信頼するハードルが下がる」「自己受容感が高まる」ことを目指し、自分の未来に希望を持てるよう支援するのだという。

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学校の中ではなく、学校の外で学びの場を提供しているのが、現代の寺子屋「Tera school」。その名の通り、京都の東本願寺や妙心寺寿聖院など、本物のお寺を利用した教室を展開している。

一般の塾とは異なり、子ども主体で学習を進めているのも大きな特徴のひとつ。一生を通して自律的に学び続けられるよう、子どもたちが自分で目標・計画を立て、講師役の大人はそれをサポートする。

Tera schoolでは、子どもだけでなく大人も学習者。学校では学べない知識なども取り入れながら、大人と子どもが同じ場所でともに学び合う中で「ナナメの関係」を築き、未来を生き抜く力を育んでいる。
 

子ども自身で情報をつかむのは難しい。大人がアンテナを張り、つなげていかなければ

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イベントでは、「どんな子も取りこぼさない教育環境づくりのために」をテーマにトークセッションを開催。高校中退・不登校などを経験した生徒が集まる「学校法人北星学園余市高等学校」教員の田中亨さん、滋賀県教育委員会のスクールソーシャルワーカーとして活動する幸重忠孝さん、不登校や発達障害などを抱える子どもたちの学びの場づくりを支援する「NPO法人トイボックス」代表理事の白井智子さんが登壇した。

「子ども自身が多様な教育の場とつながるのは難しいのでしょうか?」と疑問を投げかけたのは、実際に教育の場で行政や民間、地域などと連携しながら活動している幸重さん。多様な人が出会う機会が必要だと感じているのだそう。

そんな問いに対し、白井さんは「親に『こういう場所に行きたい』と相談しても、お金がないからと断られる子も、もちろんいる。本当に困っているところに届けるには、やはり公教育と連携するしかない。セーフティーネットの網の目を増やす活動が必要」と話す。

「子ども自身が見つけるのは2割、基本は親御さんが見つけてコンタクトしてこられる」と、田中さん。知っている人と知らない人の情報格差を感じるという。「制度と制度の溝にはまっている人もいる。まずは、保護者が最初に知ることが大切なのでは?」と、大人がアンテナを張る必要性を訴えた。

「セーフティーネットになりうるのは、やはり学校」という言葉に続けて、白井さんはフィンランドのある地域で見た教育について語った。5,500人いる子どものうち、長期の病気以外で不登校になっている生徒はゼロなのだという。学校への行き渋りがあったら、その生徒だけ授業時間を短くしてみたり、ソーシャルワーカーやスクールドクターが連携したりしてサポートする。

「先進国なのだから、日本も同じようにしているでしょ?」と当たり前のように言われてしまったと、白井さんは振り返る。丁寧にケアすれば結果につながる、それは大人の責任である、と。

さまざまな連携を通して、子どもたちに本当に必要なサポートを丁寧に届けることが、取りこぼさない教育につながるのかもしれない。
 

多様な教育を“見える化”することで、選択肢を増やしていきたい

ときには、ブースやセッションのスペースからあふれるほどの参加者が集まったエデュコレ大阪。イベントを訪れた奈良教育大学教育学部地理学研究室准教授の河本大地さんは、「大学やそこに通う学生に、こういう場があることを知らせたい」と話す。実際の教育の場とこうした活動のあいだには、まだまだ距離があると感じているのだそう。

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イベント参加者どうしの交流を目的とした「おしゃべり交流カフェ」では、「私がエデュコレに来た理由」や教育全般について会話が交わされていた。

「子ども自身が善悪の判断をつけるのは難しい」
「だからこそルールが必要」
「でも、ルールで縛り付けると子どもの自主性が育たない」
「ダメの前に、なんでダメなのかという問いかけが必要なのでは?」
「いろんなタイプの先生がいるべき。ときには、外部の力を入れることだって大切」

答えの出しにくい議題だが、相手の意見に真剣に耳を傾け、「一緒に考えよう」とする姿勢こそが、これからの教育のカタチなのかもしれない。

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エデュコレを開催する趣旨について、主催団体である一般社団法人コアプラス代表理事の武田緑さんに話を聞いた。

「子どもや教育に関わる大人に『多様な学び・教育のカタチ』を知ってもらうことで、選択肢を拡大してもらい、ひいては子どもたちが自分らしく学び育てる環境が日本に広がっていけばいいなというのが、根っこにある想いです」

子どもや教育関係者が多様な教育に触れることの意味は、大きく3つあるのだという。

「1つ目は、その人が無意識に持つ『固定観念』が自覚されることです。多様な教育に触れることで、教育って、学校って、授業って『こういうもんだ』というイメージが崩れる。それは、教育者として選択肢が広がることでもあると思います」

「2つ目は、自分の『教育観』が、比較によってクリアになることです。自分が『よい・素敵・ワクワク!』となる教育のカタチはどういうもので、自分が『イヤだ・違う・モヤモヤ』となる教育のカタチはどういうものなのか。こだわりたいこと、大切にしたいことは何なのか。学びの現場をつくる人にとって、その軸を明確に持つことはとても重要だけれど難しいことです。多様な教育が鏡になって、自分の教育観をつかみやすくなります」

「3つ目は、子ども・学習者の多様性に気づけることです。学ぶ人は多様なので、子どもの頃『すごくよかった!』と思った経験が、どの子にとっても『よい』かどうかって、本当はわからないですよね。学校行事ひとつとっても、最高の思い出だった人もいれば同調圧力で疲弊していた人もいる」

「学校を苦しいと感じる子どもを受け止めるフリースクールの存在を知ったり、発達障害の子どもたちに合わせた環境づくりをする塾の取り組みを知ったり、一人ひとりのニーズに個別に対応しようとする先生に出会ったりすると、特に現場を持つ人には、目の前にいる子どもたちの多様性が見えやすくなると思います」

エデュコレをはじめて開催した当時と比べ、世間の認識は大きく変化したと武田さんは感じている。

「フリースクールやオルタナティブスクール、教育NPOなど、子ども主体・学習者主体の学校や居場所、取り組みが圧倒的に増えました。2016年には『教育機会確保法』ができ、『不登校は問題行動ではない』という通知まで出され。公教育の先生たちとの交流も増えています。もちろん、いまの学校現場でいきなり多様な教育から学んだことが全部できるわけではないので、公教育の中には葛藤を抱える人も多いですが……」

武田さんのもとには、大阪・東京以外での開催を求める声も多く届くという。

「ここから10年で、またきっとすごく変わると思います。いまは過渡期で苦しい人も多いと思いますが、一緒に踏ん張っていきたいですね」

エデュコレ〜多様な教育の博覧会〜 2017 in TOKYO(http://educolleinfo.wixsite.com/2017
日時:2017年11月26日(日) 10:30~17:30
場所:東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)
※当日参加可

(取材・文:藤田幸恵 編集:田島里奈/ノオト)

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