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誰もが自分らしくカラフルに生きていく――関西LGBT成人式2018イベントレポート

2018年2月27日

誰もが自分らしくカラフルに生きていく――関西LGBT成人式2018イベントレポート

誰もが自分らしくカラフルに生きていく――関西LGBT成人式2018イベントレポート

2018年1月21日(金)、龍谷大学響都ホールで「関西LGBT成人式2018」が開催された。今回は本イベントをレポートする。
 

関西LGBT成人式とは?

LGBTやセクシャルマイノリティの当事者をはじめ、その家族や友人、当事者の支援者(アライ)など、さまざまな人を対象とした成人式。イベント名は関西LGBT成人式だが、全国から参加可能で、「20歳を超えた」「まだ20歳でない」という新成人ではない人も参列できる。

LGBT成人式では、参加者はその人らしい姿で、ありのままの自分を表現。成人式で祝福されることで得られる開放感、そして安心感を持つことで「今の自分を好きになってもらうためのきっかけになってほしい」という思いから運営されているそうだ。また、社会へ向けて、LGBTの正確な知識や情報を発信する場ともなっている。

主催は関西LGBT成人式2018実行委員会。有志のボランティアスタッフのみで運営されている。参加費は無料で、申し込み不要。当日はおよそ100人が会場に集まった。

2014年にスタートしてから5回目となる今年のテーマは『Re-born~そうだ、成人式、行こう。』。本テーマには、新しい自分として自分らしく生きるために生まれ変わってほしい。そんな思いが込められているという。
 

大切なのは、固い意志と真っ直ぐな気持ちを持つこと

実行委員会共同代表による開会のあいさつは、日本と海外のLGBTの認知の比較から始まった。LGBTの聖地と呼ばれるロサンゼルスでは、街中にレインボーフラッグがはためき、誰もが自分に正直になり、誇りを持って生きているという。

そのように海外の情勢を説明した上で、国内でそれぞれに取り巻く環境と戦っている参加者に向け「一人ひとりが夢と希望を持って生きていけば、必ず明るい未来になる」「たとえこの先何かつらいことがあっても、ここにいる仲間がいる」「固い意志と真っ直ぐな気持ちを持つことで、これからやってくる困難を乗り越えられる」と力強いメッセージを贈った。そして「皆さんのこれからの人生が、色とりどりに実りのある人生となることを願っています」とあいさつを締めくくった。
 

LGBTに関わる多彩なゲストによる祝辞、それぞれの想い

続いて行われたのは来賓からの祝辞。4人のゲストがそれぞれの思いを参加者に投げかけた。

●新井 祥さん「この世はぜったい良くなる」
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新井さんは漫画家であり、名古屋デザイナー学院講師でもある。インターセックスであることが判明してからLGBTを題材にしたエッセイ漫画を描くようになったそう。「本当にあった笑える話」などで作品を連載している。

新井さん:いまの社会では、思春期に生身とネットの両方の文化があり、それらがまったく異なる情報を発信しているので、何が正しいのか戸惑うことも多いでしょう。100個の「大丈夫だよ」という言葉が、1つの罵詈雑言に負けてしまうこともあります。

もし負けてしまっても、自分の周りにいる家族や協力してくれる仲間に「傷つけられた自分」をぶつけ過ぎないように気を付けてください。日本はいまLGBTの過渡期にあります。罵詈雑言に負けず、この世はぜったい良くなると信じて生きてください。

どこの国にも過渡期はあり、歴史は変化してきました。日本もずっとこのままということはありません。「外国に行けばなんとかなる」とは思わず、自分や社会と向き合って、社会人として国を変えていってほしいと思っています。

●麻倉 ケイトさん「自分らしく生きてほしい」
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麻倉さんは女優であり歌手としても活躍中。一般社団法人LGB.T代表理事で、滋賀医科大学の公認アイドルでもある。

麻倉さん:本日はおめでとうございます。私が20歳の頃は自分自身のことで悩んでいる真っ最中でした。体は男性だけど、心は女性。それをカミングアウトできなかったんです。

私は小さい頃「大きくなったらお嫁さんになれる」「お母さんになれる」と考えていましたが、成長するにつれ「自分は男なんだ」という現実に追いつめられました。

ですが、「同じ1日だったら笑っていた方がいい」「同じ一生だったら自分らしく生きなきゃ損だ」と思ったんです。それからの自分はどんどん前向きになり、いろいろなことにチャレンジできるようになりました。

例えばウエディングドレスのモデル。前例がないからと一度は断られていました。「それなら前例を作りたい」と言い続けました。すると、日本ブライダル協会の会長を紹介していただき、直談判したところ日本初の性同一性障害者のモデルになることができたのです。

2019年には全世界同時公開予定のアメリカ映画でハリウッド女優としてデビューします。オードリー・ヘプバーンのようになりたいという夢が叶います。カミングアウトすることで、自分を好きになれたんです。皆さんにも自分らしく生きてほしいと思います。

●康 純香さん「“ちょっと助けて”と言える大人になってほしい」
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LGBTの相続や日々の相談業務の専門家である康さん。“気軽に聞ける法律家”として、さまざまなイベントに登壇している。2017年、LGBTのために作った、もしものときに必要になる手続きについて記載できるノート「もしものノート」を製作し、ホームページで公開している。

康さん:私が大人歴を重ねていくに連れ感じるのは、「人生は自分がやったことしか返ってこない」ということ。例えば、勉強もやった分だけ成績が上がってきますよね。仕事やキャリアもそう。善意も同じです。人にやさしく接したことが思いもよらない形で返ってくることがあります。

その「やったこと」が努力。どんな道を選んでも、結局は努力が求められます。人に愛されたいと思ったら、まずは自分から人に好意を示さなければ、愛されません。これらの努力・行動が数十年後の自分を作ることになります。

もちろん努力しないという選択もあります。「がむしゃらにがんばれ!」とは思いません。私はゆる~く努力する派です。いずれにしても自分で選んだことに対して責任を持つのは自分です。

努力をする上でしんどいこともあります。そういう時は大人歴の長い先輩に相談することが大事。自分一人でできることは限られています。大人歴の長い人は意外とお節介で頼られたらうれしい人が多いです。

だから、しんどいときは「ちょっと助けて」と言える大人になってください。人生、楽しいことはいっぱいあるので、頑張りながら頼りながら生きていきましょう。

●うさきこうさん「LGBTという言葉は当事者が救われるための言葉」
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漫画家うさきこうさんは、ボーイズラブ雑誌でデビューすると同時に、同性愛者であることをカミングアウト。2017年、自身の少年時代を描いた単行本『ぼくのほんとうの話』(幻冬舎)を出版した。

うさきさん:成人おめでとうございます。僕が考えるに、日本のLGBT社会は、差別の歴史というよりケアレスミスの歴史なのかなと思っています。世の中の多くの人たちは、自分が差別をしているという自覚はありません。ケアレスミスをしているだけです。もちろん差別かケアレスミスかは、当事者によって受け止め方は異なります。

最近はLGBTが言葉として浸透してきていますが、それは誰かを攻撃するためのモノではありません。当事者が救われるための言葉なんです。それを忘れずにいてほしい。

これから生まれてくる子どもたちの中にも、きっとセクシャルマイノリティで悩む子どももいることでしょう。ここにいる皆さんには、そうした子どもたちの理解者になってもらいたいです。
 

西原さつきさんのトークショーも、「人生=戦い」だった20代

スペシャルゲストとして登壇したのは西原さつきさん。トランスジェンダーの世界大会で特別賞を受賞し、現在は講演会やモデルとしても活躍している。

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●自分の性別に違和感を持った思春期

西原さん:私は生まれたとき、男性でした。自分の性別に違和感を持つようになったのは14、15歳の頃です。ちょうどそのとき性同一性障害を取り扱ったドラマを見ました。そのときに「自分は心の性別と体の性別が一致していないんだ」と感じましたね。

インターネットが普及し始めた頃で、いろいろ調べたところ、どうやらホルモン注射を打てば自分の体を男性から女性へと変えられるらしいということを知りました。ですが、今のように性同一性障害のガイドラインがなかったので、どこでどれくらい受けたらいいのかさっぱりわかりませんでした。

初めてホルモン注射を打ったとき、いよいよ自分の知らない世界にいくんだ、と感じたことを覚えています。

●待ちに待った24時間女性としての生活、ところが。

西原さん:「周りの友達とは違う人生を送るんだろう。それなら勉強だけは頑張ろう」と心に決めていました。大学にはボーイッシュな女の子として通っていて、その頃にファンデーションの塗り方やアイラインの引き方を覚えました。

大学卒業のタイミングで「24時間女性としての生活を楽しみたい」と思い、広告代理店にレディーススーツを身にまとって面接に行きました。どんな質問をされるんだろうとドキドキしましたが、意外にも体のことやセクシャリティに関する質問はなく、人間性や内面について聞かれました。

待ちに待った“OLとしての仕事と生活”を手に入れたのですが、だんだんモヤモヤした気持ちが大きくなってきてしまったんです。仕事をする上で会社から、「取引先には“生まれながらの女性”として接してほしいと言われていました。

自分は嘘をつきたくないから男性から女性に体を変えたのに、今度は「生まれながらの女性」と嘘をつかなければいけない。そのことが辛くなってきたんです。

●この先の人生、自分のことを好きになれる瞬間が必ずある。

西原さん:2013年、性別適合手術を受けたとき、本会のテーマでもある『Re-Born』を感じました。それまで自分の体が嫌いで、何か嫌なことが起きると全部自分の体のせいにしてきました。手術を受けてやっと「私の人生ここから始まるんだ」と感じました。私が初めて自分のことを好きになれた瞬間です。

この先の人生において、皆さんにも自分のことを好きになれる瞬間が必ず訪れます。私と同じように性別適合手術を受けるときなのか、それとも大事な人ができるときなのか、新しい家族ができるときなのか、それは私にもわかりません。

ですが、必ず自分のことを好きになってもいいんだと思う瞬間はあります。どうかそのときは自分のことを愛してあげてください。

●人生は長い。負けるときや一歩下がることがあっていい。

西原さん:20代の頃は「人生=戦い」で、世間だったり周りの人だったり、とにかく何かに勝たなきゃいけない、負けていられなかった。いま私は31歳になりますが、この年になってようやく「人生全試合勝たなくていいんだ」と思うようになりました。

勝ちが負けより一つでも多ければ、それは幸せな人生です。にこにこ笑えるように、昨日よりも一歩だけ前に進めるように、肩の力を抜いてみてください。皆さんの人生が幸せなものになることを祈っています。

7_LGBT成人式99_各団体からのお祝いのメッセージボード

休憩をはさみ、ゲストたちによるトークセッションも実施。新井さんが司会進行役を務め、それぞれの活動内容や海外事情についての話で盛り上がった。

8_LGBT成人式03_1_トークセッション

タイではLGBTが日常に溶け込んでいる一方で、戸籍の変更ができないこと。LGBTの相続事情、法整備だけの問題、レインボー国会の話など、この会場ならではの深く幅広い話題が飛び交った。

トークショーの後は、当事者および支援団体によるアピールタイム、テーマソング合唱、閉会という流れとなった。終了後、参加者の顔は晴れやかで会場外のロビーは笑顔であふれていたと思う。

関西LGBT成人式の運営費はカンパや協賛によってまかなわれている。LGBT成人式はこの日だけのものであるが、「参加する」という勇気ある一歩が、人とのつながりを作り、人生の楽しさに気づく始まりの日になるのかもしれない。誰もが自分に誇りを持って自分らしく生きられるよう、来年、再来年と続くことを願ってやまない。

(企画・取材・執筆:水本このむ 編集:松尾奈々絵/ノオト)

<取材先>
関西LGBT成人式2018
http://lgbt-seijinsiki.wixsite.com/kansai
<関西LGBT成人式2018ゲスト>
●西原 さつき
幼少期に強い性的違和を覚え16歳でホルモン治療、のちに適合手術を受ける。トランスジェンダーの世界大会で特別賞受賞。講演会やモデルなど活躍、性同一性障害のための女性化レッスン「乙女塾」代表講師。
https://www.satsukipon.com/

●麻倉 ケイト
女優・歌手。2019年、全世界同時公開予定のアメリカ映画で、ハリウッド女優としてのデビュー決定している。一般社団法人LGB.T代表理事、また滋賀医科大学の公認アイドルでもある。
https://twitter.com/k_hatsune39

●新井 祥
名古屋デザイナー学院講師・漫画家。インターセックスである事が判明した時からLGBTを題材にしたエッセイ漫画を描くようになる。「本当にあった笑える話」等で連載中。代表作『性別が、ない!』(ぶんか社)
https://ameblo.jp/araishou/

●うさき こう
漫画家。ボーイズラブ雑誌でデビューすると同時に同性愛者であることをカミングアウト。2017年、自身の少年時代を描いた単行本『ぼくのほんとうの話』(幻冬舎)を出版。
https://twitter.com/usakikou

●康 純香
行政書士。LGBTの相続や日々の相談業務の専門家。気軽に聞ける法律家として様々なイベントに出没。2017年、開業以来の念願だったLGBT版「もしものノート」を製作。「LGBT信託」の商標を持つ。
http://kou-lgbt.com/

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