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どうやったら自分らしく生きられる? 個別指導塾Withdomが考える自己肯定感を高める方法

2018年6月19日

どうやったら自分らしく生きられる? 個別指導塾Withdomが考える自己肯定感を高める方法

どうやったら自分らしく生きられる? 個別指導塾Withdomが考える自己肯定感を高める方法

「自分はダメな人間だと思うことがある」

国立青少年教育振興機構の「高校生の生活と意識に関する調査報告書」によると、そう答えた日本の高校生は72.5%。これは日本・アメリカ・中国・韓国の4カ国中、最も高い数値であった。

自分に自信が持てず、受け身になったり、やりたいことを我慢したり、他人をうらやんだり、ときにねたんだり。そんな若者が他人の目を気にせず、自分らしく生きていくためには、一体どうすればいいのか。

若者の可能性を信じ、サポートする学習塾が神奈川県・武蔵小杉にある。「教育で世界をちょっと良くする」を理念に掲げる株式会社tyotto(チョット)が運営する個別指導塾「Withdom(ウィズダム)」だ。

大学受験を目指す個別指導塾にもかかわらず問題の解き方は教えない、生徒同士の対話を基本としたワークショップを行う、アプリで学習状況を管理するなど、Withdomには従来の塾とは一味違った取り組みが数多くある。

どのようにして若者の意識を変え、より良い方向へと導いていくのか。そのヒントを探るため、まずはWithdomの具体的な取り組みから紹介しよう。
 

生徒同士で答えのない問いを探求する「ProgressTime(プログレスタイム)」

Withdomの特徴の1つに「ProgressTime」という独自プログラムがある。ProgressTimeとは、身の回りのことや社会問題をテーマに、生徒同士が対話を重ねるアクティブラーニング型講義のこと。

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ProgressTimeの様子。毎回、教室内のテーブルが埋まるほど多くの生徒が参加する

扱うテーマは「宿題は何のためにあるのか」「どうすれば英語力を伸ばせるか」といった学校生活で感じる身近な疑問から、「幸せとは何か」「シンギュラリティ(人工知能が発達し、人間の知性を超えること)の訪れによって、どんな変化が起きるか」のような哲学的な問いまで幅広い。

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意見を出しやすくするため、最初は個人ワークから始まり、その後ディスカッションを行う

講師は明確な答えを示さず、生徒が自分なりの答えを見つけ出せるようサポートに徹する。また、人と人とのコミュニケーションを促進する学問である「ワークショップデザイン論」に基づき、ワークショップの構成や参加者の並び方など、さまざまな工夫を施している。

ProgressTimeは2018年2月から学校や塾など他の教育機関への提供も始め、同年5月時点で約100校に導入されている。2020年に控える教育改革にも対応できるとあって、導入校からの反応も上々だそう。
 

自立した学びのために設計された独自アプリ「tyotto me(チョット・ミー)」

もう1つ、Withdomの大きな特徴が自立支援学習アプリ「tyotto me」だ。主な機能は学習の計画立て・進捗管理・振り返りの3つ。

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勉強計画を入力すると、アプリはエビングハウスの忘却曲線(記憶の保持率は、20分後には58%、1時間後には44%、1日後には26%、31日後には21%まで低下するという研究)に基づき、最適な復習のタイミングを提示してくれる。

生徒は自分で作成した学習プランをアプリに入力し、学習を進める。この際、学習にかかった時間をアプリで計測し、記録することができる。

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学習を終えると、良かった点や改善点、新しく取り組みたい点を振り返る画面が表示される。こうした振り返りを続けていくことで、生徒が自立して学習し続けられるようになるという。そして、個別指導の時間には、これらのデータに基づき生徒に勉強方法のアドバイスをしている。
 

自己肯定感・自己理念・グロースマインドを育む

こうした取り組みの結果、塾生は成績を向上させただけでなく、講義での積極的な発言や周囲に流されない進路選択をするようになったという。なぜWithdomは、従来の塾とは異なる方法で成果を出せたのか。株式会社tyotto代表の新井光樹さんにその理由を伺った。

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新井光樹(あらい・こうき)さん
株式会社tyotto(チョット)代表取締役。1994年生まれ。「社会を作るのは人、人を作るのは教育」と気付き、高校1年生から家庭教師の斡旋事業に取り組む。日本大学理工学部物理学科に入学と同時に塾講師のアルバイトを始め、その後フランチャイズ契約で塾の経営を行う。2年次に大学を中退し、2016年2月に株式会社tyottoを設立、同年9月にWithdomの運営を始める。

――Withdomには、ProgressTimeやtyotto meなどユニークな取り組みが数多くあります。こうした取り組みをされている理由を教えてください。

僕が大事にしているのは、死ぬときに「自分の人生で良かったな」と思える人を増やすことです。そのためには、自己肯定感、自己理念、グロースマインドが重要だと考え、その3要素を育むための場としてWithdomを設立しました。

――自己肯定感・自己理念・グロースマインドとは、具体的に何を指すのでしょうか?

自己肯定感とは、自分が今生きていることにポジティブなイメージを持てている状態を指します。「何か特別な能力がなくても、自分はここに居ていいんだ」と思えることですね。

自己理念とは、自分の価値基準のこと。もちろんいますぐに明確な基準を持てればいいのですが、それが生涯続くものかどうかはわからない。なので「将来何がしたいか、何のために生きているか」を考え続けることが重要です。

そしてグロースマインドとは、現時点での能力にかかわらず、努力すれば目標を達成できると思える心の状態を指します。

――「自分をダメな人間だと思うことがある」と回答した高校生が多いことからも、その3要素を持てていない子どもは多いと伺えます。これはどうしてだと思いますか?

そもそも自分の人生や進路について真剣に考える機会が少ないので、自分が何をしたいか(自己理念)がわからない子は多いです。

加えて、適切な振り返りの習慣や方法が身についていないのも、理由の1つではないでしょうか。物事を振り返るとき、「宿題を終わらせられなかった」といったネガティブなことばかり挙げて、欠けているところに目が向いてしまうことも多い。その結果、心も状態もどんどんネガティブになり、自己肯定感やグロースマインドを持つことが難しいのではないかと。

――振り返りの習慣を身に付け、ポジティブな面も考える必要がある、と。

そうですね。ただ、ネガティブな面においても、「今回はできなかったけれど、次回どうすればいいだろうか?」と分析して、次に生かすことも大事です。

Withdomでは、生徒に振り返りをしてもらう際、「リフレクション」という言葉で呼び掛けるようにしています。「反省」と言ってしまうと、どうしてもネガティブなイメージが強くなってしまうので。
 

自立して学び続けられるように、問題の解き方は教えない

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――自己肯定感・自己理念・グロースマインドの3要素を育むため、どういうことを心掛けて生徒と接していますか?

生徒と講師のコミュニケーションが全てですね。Withdomの講師には、生徒自身が気付いていない内面を引き出し、より良い方向へと導くように対話してもらっています。

Withdomでは、問題の解き方はほとんど教えていません。個別指導の時間は、生徒がアプリで記録した勉強の進捗やリフレクションに対して、「どうすれば、より質の高い学習ができるか」という問い掛けが中心です。生徒が自分で状況を改善し、長期的に学習し続けていけるようにしています。

――問題の解き方より、勉強のやり方を教えるということですね。でも、計画を立てても、守れない生徒もいませんか?

実はほとんどいないんです。もし計画を守れなかったとしても、その生徒なりのできなかった理由が絶対にあります。よく挙げられるのは、「忙しくてできなかった」や「なんとなくやる気が出なかった」などですが、しっかり対話して掘り下げていくと、家庭環境や友人関係など勉強以外に問題があったりします。その場合は、その問題とどう向き合っていくかを一緒に考えて、モチベーションが上がるように働きかけます。

もちろん、単純にスケジュール管理の仕方や勉強のやり方が理解できていない生徒に対しては、次回どうすればできるようになるか、リフレクションしていきます。
 

子どもの自己肯定感を高めるために親ができること

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――塾での取り組みの中で、家庭でも応用できることはありますか?

ただただ子どもの存在を認め、リフレクションの機会を与え続けることですね。子どもの成長には、自分自身が何かを成し遂げたという達成感だけでなく、他者からの肯定も重要です。

だから、子どもが何か達成感を得られたことがあれば、親御さんは「良くやったね」と褒めてください。もしそれが悪いことだったとしても、「こんなことしてはいけないでしょ!」と闇雲に怒ってしまうのは良くないです。そんなことをすれば、子どもの自己肯定感は下がってしまうので。

――子どもが意図せずに悪いことをした場合は、その行為を認めつつ、「どうしてこういうことをしたの?」とリフレクションに持っていく、と。

そうですね。僕自身、自分の親から何かを制限や禁止されたことがないんです。けんかをして友だちを傷つけたときも、「なんでそういうことをしたの?」と問い掛けられるだけで、怒られることはありませんでした。そうすると、「いけないことだったんだ」って、子どもなりに気づくんですよ。

――でもそうしたくても、なかなかできない親御さんもいらっしゃいませんか?

ついつい怒ってしまう親御さんもいらっしゃいます。なので、塾生の親御さんには「子どもに対してネガティブなことを言いたくなったときは、少し我慢して塾に言ってください」と伝えているんです。

例えば、子どもが勉強をしていなくて、テストの点数が悪かったとき、塾にその事実を伝えていただく。また子どもに対して親御さんがついネガティブなことを言ってしまった場合も、私たちに伝えていただくようにしています。そうすれば、僕らは生徒にフォローできますし、解決のために動くこともできます。

――塾にネガティブな連絡をするなんて、嫌がる親御さんもいそうですよね。

かもしれませんね(笑)。ただ、親御さんの意識は子どもに大きな影響を与えるものです。だったら、親御さんと連携した方が、子どもを良い方向に導けるはず。

僕らは親御さんともリフレクションをしますが、やっぱりみなさんお子さんの幸せを考えていらっしゃるんですよ。その思いに立ち返ってもらうように伝えていくと、親御さんの意識も徐々に変わっていきます。
 

Withdomの塾生はどう変化したのか?

Withdomの塾生は、こうした取り組みに対して何を思い、どう捉えているのだろうか。たまたま取材日にWithdomに来ていた、卒塾生の小竹紬さんと福田菜七恵さんにもお話を伺うことにした。

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小竹紬さん(写真左)と福田菜七恵さん

小竹さんは高校3年生の4月、福田さんは高校2年生の12月に入塾。当時、同級生だった二人は、気さくで親しみやすい講師や切磋琢磨して勉強できる環境に惹かれて、都内から1時間かけて塾に通っていたという。そのかいもあり、二人とも第一志望の大学への合格を果たした。

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大教室にある勉強机。カフェのような雰囲気を演出し、リラックスして勉強できるようにしている

――実際にWithdomでの指導を受けてみて、どんな変化や効果がありましたか?

福田:私は人前で話すことが苦手だったのですが、ProgressTimeで発言を重ねていくことで、自分の意見を伝えられるようになりました。他の塾生の発表を聞いていて、いろんな意見を持つ人がいるんだと思えるようにもなりましたね。そのおかげでAO入試の面接でも、キャリアや社会問題について自分の考えを話すことに苦労しませんでした。

小竹:計画の立て方は、日常生活の中でも応用しています。やることをリストに書き、優先順位を決めて、いつまでにやるか、といったことを自然にできるようになりました。
 

背中を押せば、若者は自分の道を選択できる

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従来の学習塾とは違った目新しい取り組みを数多く行うWithdom。その根底にあったのは、ただただ若者の可能性を信じるというシンプルな教育論であった。若者の存在を認め、対話を通じて内面を引き出し、そっと背中を押すこと。そうすれば彼らはひとりでに歩き出し、自分の道を選択できるようになる。

取材の終わりに「どんな社会にしたいですか?」と新井さんに聞くと、「一人ひとりの生き方が承認され合う社会にしたい。みんなマイノリティだから、マイノリティなんていない」と話してくれた。誰もが自分の可能性に気付き、他人を認められるようになれば、自分らしく幸せに生きていける人はきっと増えていくだろう。

(企画・取材・執筆:野阪拓海/ノオト 編集:鬼頭佳代/ノオト)

<取材先>
取材先名:Withdom武蔵小杉校
詳細: 2016年9月に武蔵小杉に開校した個別指導塾。運営は「教育で世界をちょっと良くする」を理念に、教育事業を行う株式会社tyotto。コーチングをベースとした指導を行い、キャリア教育プログラム「ProgressTime」や自立学習支援アプリ「tyotto me」を他教育機関にも提供している。
URL:http://withdom.jukendou.jp/withdom-musashikosugi/

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