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マンガ・イラストは教室じゃなくても学べる? オンライン学習の実情を聞いてみた

2021年2月22日

マンガ・イラストは教室じゃなくても学べる? オンライン学習の実情を聞いてみた

マンガ・イラストは教室じゃなくても学べる? オンライン学習の実情を聞いてみた

SNSやスマホアプリなどでも目にする機会が多いマンガ・イラスト。近年、教室に通わず、オンラインでマンガ・イラストを学べるサービスも登場しています。

今回取材した、KTCおおぞら高等学院の「マンガイラストコース」もその一つ。同コースでは、もともと実施していた課題の通信添削に加え、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年4月からZoomを使ったオンライン授業も始めました。

マンガ・イラストの通信、オンライン学習がどのように行われているのか、どんな講師や生徒が在籍しているのか。マンガ・イラスト業界の現状を整理しながら、紹介していきます。

絵心が乏しく自信がない生徒でも、卒業後には絵の仕事に就ける

KTCおおぞら高等学院とは、学校法人KTC学園 屋久島おおぞら高等学校(通信制高校)の指定サポート校です。生徒は全国44校の中から、通学するキャンパスを選び、授業を受けられます。

マンガイラストコースでは、高校卒業資格を取るための授業を受けながら、通信添削やDVD教材、実習(講義)を通じて、マンガやイラストを学ぶ3年間のカリキュラムを用意。

講師を務めるのは、マンガ専門校「日本マンガ塾」に在籍する現役マンガ家や編集者。卒業生に『はたらく細胞』著者・清水茜さんをはじめ、数々のマンガ家を輩出した専門校として知られています。

マンガイラストコース1
マンガイラストコース2
マンガイラストコースのカリキュラム。1年次に基礎を学び、2年次から3つのコースに分かれて専門性を高めていきます

2013年のコース設置後、入学希望者数は年々増加。2020年度は約150人、2021年度は200人超になる見込みだそう。その背景について、日本マンガ塾の講師で、現役マンガ家・編集者である岩澤正泰さんはこう話します。

「『将来マンガ家・イラストレーターになりたい!』という明確な意思を持つ生徒もいますが、大半は『なれたらいいな』くらいの気持ちでコースを選んでいるように感じます。特に最近は、『マンガは日本文化の象徴なので、その基本を覚えておきたい』、『絵を描くのが好きなので、専門家から学んでみたい』という理由で希望する生徒が多いですね」

中には、絵心が乏しく自信がない生徒も。しかし、卒業するまでには技術を身につけ、絵の仕事に就くケースも珍しくないのだとか。

「入学当初は曲がった絵を描いていた生徒が、いまでは僕のもとでアシスタントのチーフとして働いていますからね。興味本位で入ってきたとしても、しっかり課題に取り組んでいれば、着実にレベルアップしていきますよ」

ネットを通じて広がったマンガ・イラストの可能性

マンガ家やイラストレーターを目指す時に、気になるのは「将来性」でしょう。

特にマンガに関しては、一時は出版業界全体の売上が落ち込み、斜陽産業と言われてきました。しかし、『出版月報』2020年2月号によると、2019年のコミック市場は推計4980億円、前年比12.8%増と急成長を遂げています。

その理由について、岩澤さんは「インターネットとマンガ・イラストの親和性の高さ」を挙げました。

「最近では、無料試し読みや1話ごとの低単価販売、スマホでも読みやすいページ導線など、ネットを通じてマンガを売る仕組みが確立されてきました。

特に、マンガは過去作も注目を浴びやすくなっています。2001〜2002年にビッグコミックスピリッツで連載していた『花園メリーゴーランド』(著:柏木ハルコ)という作品は、ネットのバナー広告をきっかけに、連載時を越える広がりを見せました。

電子版なら出版社が在庫を抱えるリスクもないので、今後も過去に作られた質の高い作品がヒットする余地はまだまだあるでしょう」

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日本マンガ塾講師の岩澤正泰さん

「イラストも同様で、ライトノベルでの挿絵はもちろん、企業サイトやスマホゲームなどでイラスト需要が高まってきています。特に企業サイトは、雑誌よりも掲載スペースが柔軟なケースが多いため、大量の仕事が生まれていると思います」

岩澤さんはマンガ・イラスト業界の将来について、「ネットを通じて、国内だけでなく世界の作家と戦う意識」が大切になると話します

「いまは発表の場は国内がメインですが、今後はネットを通じて世界中に作品を広げる動きも活発になるはず。世界の市場を狙えるという意味では、マンガ・イラスト業界の将来は明るいと言えるでしょう。

一方で、海外の作家さんが日本のマンガ・アニメ独自の表現技法を学んだら、彼らと競争することにもなります。最近では、中国や韓国出身の作家さんが描いたマンガが日本でも注目を集めています。マンガもイラストも、今後は世界に目を向けて作品づくりをすることが求められるでしょう」

マンガ・イラストの通信、オンライン学習はどうやって行われている?

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オンライン講義を受ける生徒の様子

では実際、マンガ・イラストの通信、オンライン学習はどのように行われているのでしょうか?

マンガイラストコースでは、テキストとDVDを用いて学習を進めます。生徒は取り組んだ課題をマンガ塾へ郵送し、講師が赤ペンで添削するのが基本の流れです。

月2回ほど行われる講師による講義では、Zoomを用いて課題の補足説明や質疑応答を行っています。2年次以降は講義に加えて、ブレイクアウトルーム(ミーティング参加者を少人数のグループに分ける機能)にて、1対1の個別相談を実施。ここでは課題の添削だけでなく、オリジナルの作品内容や進路の相談なども受け付けています。

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日本マンガ塾講師によるオンライン講義の様子。画面共有しながら解説を行っている

岩澤さんは通信添削やオンライン個別相談では、「絵からその生徒の気持ちを汲み取ることを大切にしている」と話します。

「たとえば、手を丁寧に描いていれば、その生徒は手にこだわりがあるのかもしれない。そこを褒めると、喜んでくれることが多いです。さらに踏み込んで、『じゃあ肘をこうすれば腕は完璧だね』、『違う角度の手を書いてきてよ』など、具体的なアドバイスをするように心がけていますね」

通信添削やオンライン講義ならではの難しさもあるように思えますが、岩澤さんは「コミュニケーションの問題はあまり感じていない」そう。

「オンラインだと恥ずかしがって生徒が顔を見せてくれなかったり、課題を出し渋ったりすることはあります。対面だったら、『ええい!』と力技で課題を回収できるんですが……(笑)。

ただ、基本的にマンガもイラストも一人で黙々と描くものだから、オンラインのほうが自分のペースで集中しやすいかもしれない。メリット・デメリットはありますが、授業全体としては特に大きな問題は感じていないですね」

オンライン学習を受けている生徒は実際どう思っている?

オンライン学習を受けている生徒は、どのように感じているのでしょうか。マンガイラストコース2年次生の木村凛さんにお話を伺いました。

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マンガイラストコース2年次生の木村凛さん

幼い頃から絵を描くのが好きで、市販の教本を使いイラストを学んできた木村さん。中学生の頃に独学の限界を感じ、同コースで学ぶことを決めました。

「もともと私は不登校ぎみで親もそのことを理解していたので、通信制高校でイラストを学ぶ進路を応援してくれました。独学だと自分の得意なことばかりやりがちなので、講師の添削や講義で苦手な構図や向きの描き方を克服できたのはすごく大きな変化だと思います」

木村さんの場合、1年次生の時は対面講義でしたが、2年次からはオンライン講義に切り替わりました。

「直接顔を合わせて会話をするのが苦手なので、オンライン講義になって気持ちはラクになりました。特にオンラインでは講師から質問を受ける機会が少ないので、以前より緊張せずに受けられます。

一方で、私から講師へ質問するのが難しくなりましたね。オンラインだといつ質問していいのか、タイミングに迷ってしまいます。また、絵の添削のしづらさも課題の一つです。講義後の個別相談の時間で講師に絵を見ていただく際、固定カメラを移動させて絵を映しているのですが、光が反射して見づらくなってしまうんです」

マンガ・イラストに限らず、オンライン学習を進める上でのハードルとして、自習が必要になる点が挙げられます。木村さん自身、モチベーションの維持に苦戦したそう。

「以前はキャンパス内で周囲に生徒がいる中で、講義課題に取り組んでいました。でもいまは、家で一人で学習を進めなければならないので、自分から『よしやるぞ!』という気持ちをつくるのが大変。

私の場合、講義前の30分で集中して課題に取り組んだり、講義が終わってすぐのモチベーションが高まっている時に一気に描いたりしています」

進路の選択肢を狭めないため、個性を大切に

こうした工夫のかいもあって、全国のKTCおおぞらの生徒が競い合う「KTCおおぞら杯」のイラスト部門で、木村さんの作品は今年度の準グランプリに選出されました。

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準グランプリに輝いた作品『比翼のワルツ』。欠けた部分を持つ二人のキャラクターが支えあいながら、ワルツを踊るシーンを描いた。

高い画力を持つ木村さんですが、現在の進路はイラストレーターではないとのこと。

「以前はイラストレーターになりたいと思っていました。ただ、実際知り合いから仕事として絵を描いてほしいと頼まれたときに、なんだか自分でハードルを上げてしまって、うまくできなかったんです。それで私は好きなことを本業にするより、趣味としてイラストを描くほうが向いているかなって。

いまの私の夢はネイリストになることで。実は母がネイリストの資格を持っていて、小さい頃からネイルを教えてもらって遊んでいたんです。おおぞら杯にはネイル部門もあるので、作品を出したところ、ありがたいことにグランプリをいただいて……。ネイルならマンガイラストコースで学んだことも生かせるし、イラストを描くような気持ちで続けられそうだなと」

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ネイル部門でグランプリに輝いた木村さんの作品『Sky』。審査員からは「ダントツのグランプリ受賞!」と太鼓判を押されたそう

マンガイラストコースでは、生徒の選択肢を狭めないために、一人ひとりに合った進路を選べるサポートを心がけているそう。岩澤さんは「自分の向き不向きを知り、個性を生かして進路を選んでほしい」と話します。

「マンガやイラストは個性が大事。一人ひとりに合った絵があるので、他人と比較して自分の絵はダメだと思う必要はありません。僕自身、高校生の頃は絵のうまい人を見て、マンガ家になれないと挫折していました。

でも、マンガ塾に通って知識と技術を身につけることで、マンガ家としてやっていく自信がついた。だから、みなさんも『自分はへたくそだ』と諦めずに、ぜひマンガ・イラストを学んでもらいたいです」

(企画・取材・執筆:野阪拓海/ノオト  編集:鬼頭佳代/ノオト 写真提供:KTCおおぞら高等学院、木村凛)

<取材先>
KTCおおぞら高等学院

学校法人KTC学園屋久島おおぞら高等学校のグループ内のサポート校。全国44校のキャンパス、3つの学科、8つのコースがあり、生徒は自分に合った学科・コースを選べる。「高卒資格がゴールじゃない。なりたい大人になるための学校。®」として、生徒たちが、一人ひとりの「なりたい大人」像を伸び伸びと描いていけるような体験や学びに重きを置いた教育を実践している。

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