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プログラミングを学び損ねた世代は、今から何をどう学べばいい?

2022年4月5日

プログラミングを学び損ねた世代は、今から何をどう学べばいい?

プログラミングを学び損ねた世代は、今から何をどう学べばいい?

2022年度から、プログラミング教育が高校で必修化され、2025年度の大学入試共通テストからは、プログラミングやデータ分析を含む「情報」が新たに受験科目として加わります。

どんどん進むプログラミング教育。しかし、学校でプログラミングを学びそこねた世代は、今から何をどのように学んでいけばよいのでしょうか。

2021年に開校した学校法人角川ドワンゴ学園 S高等学校の初代校長であり、プログラミング講師、ソフトウェアエンジニアとしても豊富なキャリアを持つ吉村総一郎さんにお話を伺いました。
 

プログラミングが必修化された背景とは?

――2020年度からは小学校、21年度からは中学校、そして22年度からは高校でのプログラミング教育が必修化されます。導入が進んだ背景にはどんな要因があるのでしょうか。

世界の時価総額ランキングを例にとるとわかりやすいのではないでしょうか。2022年1月時点の世界時価総額ランキングを見てみると、1位のAppleを筆頭にGoogleを運営するAlphabetやMeta Platforms(旧・Facebook)、MicrosoftなどのIT系企業が上位を占めています。

この30年で時価総額自体も飛躍的に上昇しています。1989年の世界時価総額ランキング1位は日本電信電話(NTT)の約1,638億ドルでしたが、2022年首位のAppleは2兆8,281億ドルとおよそ17倍超に。一人あたりの生産性は大きく向上し、平均株価も上昇しています。

なぜこうした変化が起きたのか。その理由を紐解いてみると、つまりはITが発展したからなんです。

たとえば、洗濯。昔は2〜3時間もかけて手作業で行っていたことが、今は洗濯乾燥機のタッチセンサーをピッと押すだけ。これもITの発展のおかげであり、浮いた時間が生産性向上にもつながっています。

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洗濯機に限らず、私たちの日常生活にはそういった電化製品がいまや大量に組み込まれています。

だからこそ、それらの仕組みを理解すれば、楽できることがたくさんあるし、人生が豊かなる。それが「プログラミング」という分野を必修科目として学ぶべき大きな理由だと私は考えています。

――プログラミングは、現代人が身につけておくべき基礎教養になっているということでしょうか?

おっしゃるとおりです。多くの日本人は社会の時間などで稲作について学びますよね。田んぼに水を張り、苗を植え、刈り取って、脱穀して白米になる。これは日本人の主食が長らく米だからです。

同じように、ITやAIに囲まれた現代の生活においては、私たちはその基礎となっているプログラミングに慣れ親しんでおくべきです。2003年に文部科学省が学習指導要領に「情報」を新設したのはそういった時代の変化を受けてのことでしょうし、今回のプログラミング教育の必修化もこの流れの一つです。
 

プログラミングの基本は「命令」である

――では、あらためて「プログラミング」とは具体的に何を学ぶのでしょう。

一言で表すのなら、プログラミングとは「コンピュータに何かを命令する」方法です。たとえば計算機に数字を入力して計算させるように、自分の代わりにコンピュータを働かせること、と言い換えてもよいでしょう。

プログラミングの基本は、順次実行・分岐・繰り返しの簡単な3要素です。指定した手順に従って実行し、条件に応じて動作を変え、それを繰り返していく。世の中に出回っているソフトウェアを使うときは、誰かが作った命令を再利用している状態なんです。

――なるほど。とはいえ、そういったことはアプリやゲームを作るエンジニアのような専門職の仕事では?

そんなことはありません。自分でプログラミングができるようになれば、日常の小さな悩みごとを解決できる場面は明らかに増えます。

たとえば、体の具合の悪いおばあちゃんがいたとします。もし今日1日が晴れるなら病院に行きたい。それで、「毎朝起きてすぐ、カーテンを開けなくても今日の天気がわかればいいのに」と考えていたとしましょう。

もしプログラミングができれば、天気予報のAPI(アプリケーションの開発を容易にするためのソフトウェア資源)を使って、そのエリアの天気予報を毎朝おばあちゃんのスマートフォンに自動で通知を飛ばせる仕組みを作れます。

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登山が趣味の人ならば、「週末はどのエリアの山が快晴で登りやすいか」がわかるプログラムを作ることもできる。さらに、その情報を自分のGoogleカレンダーに自動で組み込んだり、友達と共有できたりする仕組みだって作れます。マニアックな問題も、自分用にカスタマイズして解決できるんです。

もちろん天気以外にもいろんなことができます。GPSや標高差、難易度などをデータ解析して、「こういう山が好きならば、こんな山もありますよ」とおすすめしてくれることもできるはず。すでに、そういうアプリは登場しているかもしれません。

そんなふうに自分の代わりにコンピュータを働かせることができれば、余った時間を別のことに使えるようになります。
 

独学や学び直しをするならどうすれば?

――プログラミングの見え方が変わってきました。個人的なニーズや悩みをピンポイントで解決できる手段として有用なんですね。とはいえ、プログラミングが必修ではなかったため学びそこねた世代や初心者は、どのように学んでいけばよいでしょうか。

初心者であれば、まずは動画や入門書を通じて、プログラミングの基礎を学ぶところから初めてみてください。オンラインの学習サービス「Progate」には無料プランもあります。特に「Progate」は初心者に「コードってこんな雰囲気だよ」と伝えることに注力しているサービスです。

経済産業省が実施する「ITパスポート試験」の勉強もITやプログラミングの基礎を学ぶ上で有効ですね。

もう少し歯ごたえを求めて、「自分でアプリを作れるようになりたい」「この問題を解決したい」という目的がある人は、私が講師を務めている学習サイト・アプリ「N予備校」をおすすめします。教材の一部を無料公開していますので、興味がある方はぜひ覗いてみてください。

今はあらゆるところで学びのプラットフォームが見つかりますから、自分に合った場で基礎知識を学んだ上で、どんどんコードを書いていきましょう。

失敗したら、また改変すればいい。書いて、壊して、改変する。これを繰り返していくことで、着実にプログラミングの基礎力がつきます。

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――吉村校長はプログラミング講師として小中高生からビジネスパーソンまで、多数の人々にプログラミングを教える経験をお持ちですが、プログラミングを学んでいく上で大切なポイントは?

私は、プログラミングは音楽や美術に近い領域だと強く感じています。ピアノやギターをうまく弾けるようになるためには、どうしたって実際に手を動かさないといけませんよね。マンガや絵だって、上達するには描き続けるしかない。

プログラミングも同じで、手を動かして実践していくのが上達への一番の近道です。

プログラミングの面白いところは、その人の脳の構造がそのまま表現されることです。どう命令するか、どこで分岐させ、どこで繰り返させるか。同じ「命令」でも人によってまったく違うコードになるんですね。

たとえば、文化祭でお好み焼き屋の看板を出すとして、ただ「お好み焼き」と字だけを載せるか、黒地に白抜きの字で「お好み焼き」と目立たせるか、湯気が立っているおいしそうなお好み焼きの絵を描くか、いろんな見せ方がありますよね。

プログラミングも、分岐や繰り返しにその人の個性が出てきます。芸術家と同じで、普遍的な美しさを持つコードを書く人もいますよ。
 

学んで損になることはひとつもない

――大人になってからでもゼロからプログラミング学び直すことはできますか。

もちろん30代、40代からでも学び始めることは十分に可能です。ただし、音楽や絵画と同じで、若いうちに始めるほうが吸収力が高いことは事実です。

けれども、この社会からITが一掃されるような事態が起きない限りは、大人であってもプログラミングを学んで損になることはひとつもありませんから。

それに、人類は学び続けるものですよね。大人になってから新しい分野について学んだことが、その先の長いキャリアにおいても役立つ場面はたくさんあるはずです。プログラミングについて少しでも知りたいと思う気持ちがある人は、今からでもまったく遅くありません。

プログラミングが必修化されると、これから社会に出ていく世代は全員がプログラミングを基礎教養として身につけているということになります。そうした世代が続々と会社に入ってくるようになれば、仕事のあらゆる局面をプログラミングで自動化していくことが普通になるでしょう。

プログラミングが基礎教養化した時代の変化に焦りを感じている人、このままでいいのかとプレッシャーを感じている人は、ぜひその危機感を学びのモチベーションに変えて、プログラミングに一度触れてみることをおすすめします。

(取材・執筆:阿部花恵 編集:鬼頭佳代/ノオト)

<取材先>
学校法人角川ドワンゴ学園 S高等学校 校長 吉村 総一郎さん

東京工業大学大学院修了。エンジニアとしてドワンゴ入社、ニコニコ生放送の各種ミドルウエア開発に携わる。その後、角川ドワンゴ学園にてIT戦略部長、講師としてプログラミング教育を牽引。
https://nnn.ed.jp/high_school_feature/s_high_school/

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